2010.02.27 硬さは枝豆
針生検の結果を待つまで数週間あって
その間、一日数十回はしこりを触って確かめていた。

針生検の時にしこりの部分にピンクリボンと同じ形をした
小さな金属を入れる。
そのしこりは生検済みだという印である。

空港のX線にも映ってしまうというから
もしこれが良性だったら私はこのリボン金属をここに入れたまま
生活することになる。

しこりはこの金属が入ったせいか
やや、硬く大きくなってきたような気がした。

ちょうどあずきくらいの大きさだろうか
押すと指先からツルッと逃げて硬さは茹でた枝豆くらい



やっぱり「乳の岩」じゃないから
良性?

その頃から多くの日本の乳がんブログを読み出して
アメリカでは乳がん患者が集まるフォーラムにも
参加して夜中まで書かれた投稿を読んだ。

何時間も、何時間も時間を費やした
そうしないと心が落ち着かなかった。

同時に乳がんは思っていたほど軽いものではないと
いうことがわかった。

初期なら取れば終わりだなんてもんじゃなくて
一度なってしまえば10年以上も心配は消えない
全身病だということがわかった。

読めば読むほど怖くなったけど
それでもやめられなかった。
乳がんについてとにかく情報が欲しかった。
2010.02.27 針生検の日
「core biopsy」をネットで検索してみると
太い針だったから当日まで怯えていた私だった。

12月の2週目でクリスマスも目前という時、
広い病院でうろうろと迷っていると
乳がんナースAが笑顔で私のほうへ歩いてきた。

たいていのアメリカ人夫は妻に付き添ってくるものだと
思うけど、私はひとりで来た。
私が一人で行けるから大丈夫だと言ったから。

さて、結果から言うと針生検は全く痛くはなかった。

まず本格的な麻酔を刺す前に皮膚表面に少し麻酔をする
チクッとするだけ。

皮膚表面に麻酔が効いたら、今度は皮膚の奥まで
麻酔をいれる。

その後太い針を差し込んでも感覚はゼロ。

中身を採取する瞬間にバシッという大きな音がするから
多少びくっとしたけど、痛みはなかった。

乳がんナースAは私の横にずっと付き添っていてくれた
彼女が傍にいてくれるだけで心強かった。
まだ一度会っただけなのに、なんでだろう。



そして針生検の結果を聞く為のアポイントメントの日は
生涯忘れもしない

2010年1月4日だ 

おかげでクリスマスも元旦もなんだか、心がざわざわして
何をしていたんだかよく思い出せない。

ただ、心のどっかでまだ小さな希望は持っていた
ような気がする。

生検の傷はあっという間に治りどこを刺したのかも
わからなくなっていった。
エコーを取る日がやってきた。

RadiologistのドクターTが薄暗いエコー部屋に入ってきて
私が指で示した部分の画像を映し出した。

まん丸で黒くて良性のしこりにそっくりだと思った
中に水が入っていると中身が黒く写るのは事前に調べてあったから。

「1センチですね、針生検しましょう」

「えっ、これ中身が黒いのに悪性なの?」

「真っ黒というのはこういう色のことで」と画像の真っ黒な部分を指して
「これは真っ黒とは言えないんだよ」

よく見てみると真っ黒じゃなくて灰色…

…あの、この中に血管は走ってるんでしょうか?って聞きたかったけど
怖くて聞けなかった。 

だって、血管走る=がんですから。

後で調べたら私の画像はこのウェブサイトに掲載されている 
「充実腺管癌の典型例」ってやつに似ていた。 
http://www.ususus.sakura.ne.jp/062-013lsolitubu1.html

でも、ドクターTいわく
fibroadenomaと呼ばれる良性のしこりも似た感じに写るので
その場合はすべて針生検で調べるとのこと。




「見つけてくれてありがとう」と嬉しそうに私に言ったドクターTの
顔は感謝してるみたいだった。

だって、3ヶ月前に撮ったマンモから彼は何も見つけることは
できなかったんだものね。

「これってがんなんですか?」

「中身を調べるまでは僕もわからない
もしがんでも1センチしかないから抗がん剤もしなくてもいいかも
しれないし、ね?」

私と目を合わせない気の優しいドクターTは明らかに動揺していた。




頭が真っ白になっている私とエコー部屋を出たドクターT

「ちょっと待って、今乳がん専門のナースを紹介するから」

私の前に現れたのは乳がん患者だけをケアするベテラン乳がんナースA、
明るくてひまわりみたいな女性だった。

乳がんナースAの部屋はピンクリボンや乳の写真でいっぱいだった。
とりあえず、不安だった私の気持ちを彼女にぶちまけて
話を聞いてもらったら少し気分はおさまった。

彼女は私の2週間後の針生検に付き添ってくれると言った。

彼女に「Don't worry」とひまわりみたいな明るい笑顔で言われると
本当に何も心配しなくてもいいような気分になれた。
2010.02.26 お米の粒
11月初旬のある朝、シャワーを浴びていつものように
胸をチェックしながらワイヤーブラに(小さな)胸を押し込んでいた。

左胸の乳首上1.8cm位の12時方向にお米のような
小さな塊があることに気が付いた。
そこは筋肉と皮だけだったので米粒サイズでも指に触れた。

一瞬、ヒヤッとしたけど右胸の同じ場所を触ってみるとそちらも
多少デコボコしていたので、気にせずそのまま過した。

だって、私は3ヶ月前に乳がん検診でマンモを取ったばかりで
結果は異常なしだったんだから。



それから2週間が経ち、11月末のアメリカの感謝祭の数日前
生理が終わって胸が柔らかくなっていたからもう一度確認してみたら

まだあった 

お米よりも少し大きいような気もする。
押すと動くし、岩みたいに硬くはなくコリコリして
丸くて小豆よりは一回り小さい位だった。

とりあえず急いで病院に電話をかけた。

電話に出た人に「胸にしこりを見つけた」というと
普段なら予約は1週間は先になるのに、
「すぐにナースに電話させるから」と言われて待っていたら
一時間もしない内にナースから電話がかかってきて
「今日の午後2時に病院に来れる?」




病院に行くとファミリードクターが私の胸を検診した。
「触ったところ、これは良性だと思うわ。でも心配だから
とりあえずエコーを取りましょう。」

私は先生にハグをして
「先生の言葉を信じて楽しい感謝祭を過します」と
言って帰った。

それから家に帰り良性と悪性のしこりについて調べた。
どう触ってみても良性っぽい。

だって、ころころ動くし硬くない。
“乳の岩”って感じじゃないし、きっと大丈夫だと信じて

一週間後のエコーの日を迎えた。